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北四番丁通信

 

「北四番丁通信」とは、仙台教会で日曜日ごとに発行している「週報」の巻頭言です。牧師および複数の教会員が執筆を担当しています。

当教会は1955年に仙台市の北四番丁沿い・旧奥州街道近くに設立されましたが、「北四番丁」という地名は、400年以上も前に城下町が造られた当初からの由緒ある地名で、江戸時代は武家屋敷が連なっていた地域でした。

歴史の流れと共に町並みも住む人々もどんどん変わっていきますが、いつの世においても変わることのない真理の言葉を、仙台教会に許されている時間の中で、たゆむことなく宣べ伝えていきたいと私たちは願っています。

賢治と妹トシとイエス様 

2025年2月9日 中山晴久(教会員)

 教会T・S大兄の勧めで、NHKの「こころの時代」を視るようになってしばらくになる。各宗教の深掘りから真の福祉に取り組む人物まで多種多様で、今この世界で一番必要な“共に生きる”が散りばめられている。そして各回の背骨を貫く“優しさ”に、心が熱くなる。

 もちろんキリスト教に因んだ方々の登場もある。ウクライナで戦火の中、被災者の支援をする加古川バプテスト教会船越牧師や、路上生活者・元受刑者の支援に取組むメダデ教会西田牧師などは涙が出た。

 今は、再放送だが「宮沢賢治 久遠の宇宙に生きる」シリーズを楽しみにしている。おらが東北の生んだ天才作家宮沢賢治だが、恥ずかしながら作品は「雨ニモ負ケズ」をかじった程度だった。紹介の中で、わずか37年の生涯でなんと278作品も書き上げているのにはびっくり。そして、各作品の根底には、法華経を熱心に信仰する賢治の奥深い宗教観が流れていると解説の仏教学者・北川前肇氏は力説する。

 特に「銀河鉄道の夜」の週は、心が震えた。単なる御伽話くらいにしか思っていなかった事を恥じ入る壮大な魂の物語だった。主人公ジョバンニと親友カムパネルラの2人の少年が「本当の幸い」を探しに、北十字星から南十字星まで銀河鉄道で旅をし、様々な乗客との出会いを通し「死をも超えた世界」にそれを見出そうとする物語だったのだ。

 感想は読んでもらう事に委ねるが、北川氏の解説の中で「えっ!」と思う紹介があった。短い説明だったが、キリスト教の表現が随所に出てくるというのだ。調べてみるとなんと「十字架」という言葉が14回、「神様」が3回、終着駅にはイエスらしき人物まで出てくるのだ。この物語を書くきっかけは、賢治作品のよき理解者で最愛の妹トシを24歳の若さで天に送ったことが大きかったと言われている。嘆き、悲しみ、痛み等辛苦をやっと乗り越えた2年後に出筆のペンを執ったのだ。その渦中で、法華経信者ながら、内村鑑三の弟子との交流等で得た聖書の知識の中に、心の整理の糧を見出したとしてもおかしくないと思う。

 最後の方でこんな箇所が出てくる。タイタニック号で死んだと思われる姉弟と青年が出てきて天国への別れの際、姉がさそりの火の話をする。「さそり座のアンタシウスは天敵であるイタチに見つかって食べられそうになって井戸に落ちた時に、自分の毒でたくさんの動物を死に追いやったのを憂い、悔い改めの祈りをする」。「どうか神さま。空しく命を捨てず次には、みんなの幸のために私の体をお使い下さい。」と。すると、自分の体がまっ赤な美しい火になって燃えて夜の闇を照らし続けたというのだ。まさに、イエスが山上の説教で言った「あなたがたの光を人々の前に輝かしなさい。人々が、あなたがたの行いを見て、あなたがたの天の父をあがめるようになるためである。」の通りではないか。

 ここからは想像だが、「銀河鉄道の夜」が妹トシへの壮大な鎮魂歌だとすれば、法華経を土台にはしていても、イエスの存在なくしては、天に召されたトシと繋がることができなかったのではないだろうか。この青年・姉弟が去る時、沈み行くタイタニック号の上で流されたという賛美歌「主のみもとに」が歌われる。そこにトシへの想いを垣間見た気がした。 

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